相武山 妙法院のブログです。
「世相に学ぶ」の二話目は『交通事故と心筋梗塞』。
仏教の基本思想は「諸行無常」ですから私は常々『人生、何が起きても不思議ではない・・・』と考え、人生の心得として皆さまにもお伝えしています。それでも『こんなことが起きるんだ・・・』というようなことに遭遇します。今回、兵庫県加古川市での交通事故もその一つでした。
★交通事故の経緯。
去る11月4日、午後4時半過ぎのこと、兵庫県加古川市加古川町の国道250号線で、乗用車など合わせて13台が絡む多重事故が発生。最初に衝突した車を運転していた78歳の男性が死亡。子どもを含む男女合わせて10人以上が負傷(報道によっては17人重軽傷との情報も)という大きな交通事故。
警察の捜査によれば死亡した男性の死因は急性心筋梗塞だったことが判明。ドライブレコーダーの映像などから、男性が運転する車が速度を落とすことなく、信号待ちをしていた車の列に突っ込む玉突き事故であったことがわかります。同乗者の証言などから、男性は事故の直前に心筋梗塞の発作を起こし、意識を失い運転不能な状態に陥った可能性が高いということでした。
★「健康起因事故」の危険性
私は今回の事故ではじめて「健康起因事故」という言葉があるのを知りました。健康起因事故というのは、心臓疾患(心筋梗塞、心不全など)や脳血管疾患(脳 出血、くも膜下出血など)、てんかん発作、重度の睡眠時無呼吸症候群(SAS)などが主な原因となる事故のこと。
誰もが想像できるように、運転中にこのような症状に襲われれば事故が起きるのは当然です。今回のような心筋梗塞などの心臓疾患は、前触れなく急に症状が現れ、運転者が意識を失い正常な運転操作ができなくなって重大な交通事故に直結します。鉄道車両や大型自動車、航空機や船舶など、公共交通機関の運転者に厳しい健康管理が求められる理由です。
★健康起因事故の類似事例
①タクシー運転手によるくも膜下出血事故。
2021年1月、東京都渋谷区の甲州街道で、タクシーの運転手が走行中にくも膜下出血を発症し、意識を失ったとみられる事故が発生。タクシーは横断歩道を渡っていた歩行者6人をはね、1人が死亡、5人が重軽傷を負った。運転手は健康診断を受診していたが、高血圧などの持病もあり、急な脳疾患の発症により運転操作が不能になった。
②バス運転手による乗客死亡事故(てんかん発作の可能性)。
2012年4月、京都府京都市の祇園で、軽ワゴン車が暴走し、歩行者や他の車を巻き込み、電柱に衝突した事故が発生。運転者を含む8名が死亡、12名が重軽傷を負った。運転手はてんかんの既往歴があり、事故はてんかん発作による意識障害が原因と指摘されている。裁判では運転者本人だけでなく、家族や雇用主の管理責任も問われることとなった。
③タクシー運転手による心不全事故(健康診断未受診)。
2020年12月、北九州市内で、法人タクシーが乗客を乗せて運行中に道路右側の電柱に激突する事故が発生。この事故により、運転者と乗客1名が死亡、他の乗客2名が負傷した。事故原因は心不全と報じられた。運転者は過去に心疾患の診断を受けて投薬を続けていたが、事業者はその情報を把握しておらず、直近1年間の法定健康診断も未受診だった。
以上の具体的な類似事例3件を紹介しました。
★事故の予防と対処法?
このようなことから法話会では、心臓疾患や脳疾患など、運転に支障をきたす可能性のある疾患の予防と対処には、日頃から次のような健康管理が重要であることをお伝えしました。
・定期的な健康診断。
自覚症状が少ない場合もあるため、定期的な健康診断や人間ドックで早期発見・早期治療を心がけることが大切。
・危険因子の管理。
高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙などの危険因子がある場合は、医師の指導に従って生活習慣の改善や治療を徹底することが重要。
・体調不良時の運転中止。
胸の痛み、動悸、めまい、意識が遠のくなどの体調不良を感じた場合は、すぐに安全な場所(路肩、パーキングエリアなど)に車を停車し、運転を中止する。
・すぐに119番通報。
救急車を要請することが重要。
今回の大きな交通事故は、運転中の体調急変が自分だけでなく、周囲の人々を巻き込む重大な結果につながる怖さを改めて示すものとなりました。世相からの学びとして「諸行は無常。人生どこで何が起きても不思議ではない」を皆さまと再認識した次第です。
※詳細は相武山だよりのウエブ動画をご参照ください。
相武山 山主
2025年11月26日