相武山 妙法院のブログです。
10月の日曜法話会は5日。例月中旬に開く法話会ですが、10月は最終週に御会式を執り行うために月初めの開催でした。法話会のテーマは「葬儀のいわれー 人生の尊厳と親族の祈り ー」。
葬儀は人生を歩んできた一人の人物がこの世を去り、私たちの識ることのできない世界に旅立つ時に営まれる大切な儀式。この儀式やその意識は人類の文化や文明と深くつながるものですが、その原点はおよそ10万年前の人類史に遡るといわれています。
檀信徒の方々の葬儀執行は妙法院にとってとても大切な法務です。与えられた人生の幕を閉じられ御仏の世界に旅立たれる故人の安寧を祈り、ご家族親族の方々の悲哀に共感し、穏やかな日常に復することを願い丁重に葬儀式を執り行っています。
我が国では近年葬儀式が軽視されたり、疎かにされることが珍しくありません。過剰な礼儀や儀式は時代に即して簡素化されて行くことは当然であり、葬儀も各人各様の価値観に基づくのでしょうが、葬儀に対する知識、見識がほとんど無いためか。その意義について思考することが無いうちにその事態を迎えたのか。それでいいのですか?と想わざるを得ないこともお見受けします。
当山には後継者不要、国籍宗教不問の永代供養墓や樹木葬墓地があり、新たに求められる方々からは『もう少し丁寧に葬儀や仏事を営めばよかった』との声を頂くことがあります。葬儀や仏事の意味がわからず、また、急な事態にどのように対応すれば良いのかわからなかったのでしょう。そのようにいわれる方のほとんどが埋葬・埋蔵にあたって追善供養を望まれ、『よかった。安心しました。』と仰います。
檀信徒の方々には折にふれて葬儀や仏事について説明する機会もありますが、法話会に参加される方々にもお伝えしたいと思考した次第。
日曜法話会の趣旨について簡略にふれた後、プロローグとして、テーマは『9月27日に放送されたNHK「おはよう日本 シリーズ多死社会」』によることを説明。
●プロローグ
2025.9.27. NHKでは「おはよう日本 シリーズ多死社会」「葬儀会社に頼らない弔い」を報道。
神奈川県大磯町の東光院の活動を紹介しながら、「誰もが経験する葬儀について考察。現代は死者の尊厳が護られなかったり、多様性という表現で軽視される風潮がある。葬儀は死者の尊厳を認め、親族が悲しみの中にも良い旅立ちだったと思える儀式でありたい。儀式とは心に思い描く想いをかたちに現したもの。礼儀、行儀、マナーの本質に通じる大切なもの等」を考えさせる内容でした。
●NHK『シリーズ多死社会』とは
NHKの『シリーズ多死社会』は、死亡者数が急増する「多死社会」を迎えた日本の現状と課題を多角的に掘り下げ、視聴者に「死」をめぐる希望や課題を問いかけることをテーマとしています。2010年以降、社会の高齢化が進むにつれて生じる「死」をめぐる課題を多角的に報じており、特定の期間に連続したシリーズとして放送されることもあれば、社会状況の変化に合わせて不定期に特集が組まれていることを解説。
番組が焦点を当てている主なテーマは「終末期医療のあり方。無縁死と社会的孤立。インフラの限界。看取りの体験。葬儀・お墓の多様化」など。番組では「死」の問題を医療や看取りの側面だけでなく、社会全体の構造的な課題として捉え、視聴者が自身の死生観や、社会と人とのつながりについて考えるきっかけを提供することを目指しています。今後も社会情勢の変化に応じて新たなテーマが取り上げられる可能性があることを紹介。
●葬儀会社に頼らない弔い
誰もが葬儀に直面しては混乱することを解説。
『家族の逝去に直面して精神的に動揺している。大多数の人が「どうして良いかわからない・・・(人生で主体的に関わる機会は数度ほど)。かつては、家族親族、友人知人、地域の人々、会社の人々、菩提寺などの指導助言があった。核家族化、家族葬、互助の関係が喪失されている・・・などによる。一般人が葬儀社に依頼する葬儀式は高度成長期から。葬儀のことを検討したり、準備することは「縁起でも無い」とか「失礼」として忌避する傾向がある。知識も心得も準備もないまま葬儀に直面して混乱するのが現実。
続いてそのような状況の中でも否応なく葬送は進められます。そしてその推進役は病院からご遺体を預かる葬儀社ということになるのが一般的です。しかし、葬儀社となじみの有るという方はほとんどいないでしょうし、葬儀社のすべてが透明性が高いわけでもなく、その内実をよく承知して葬儀依頼をすることも難しいというのが現実です。
多くの方はどのように葬儀を営めば良いかが理解できぬまま、はじめて出会う葬儀社の進められるままに故人を葬送してしまうということになりますから困ったことです。それでも故人を荼毘にふさねばならない時間が迫ってきてしまうのです。このような現実からは後になって後悔や愚痴がこぼれるようになるのも仕方がありません。
法話会ではこのような現実から『今ブームの「小さなお葬式・・・」その実態は?葬儀互助会掛け金の意味、本当に経済的なのか?ほとんどの葬儀社は利益優先のビジネス(よほど良心的な葬儀社以外一度きりのおつきあい)?など』を説明。故人の尊厳のため、家族や親族、友人の安心と納得のため、難しい面もありますが葬儀社の選択と葬儀司祭者の選択が大切であることをお伝えしました。
次に報道からは『多死社会を背景に従来の形式的な葬儀ではなく、費用や形式の面で負担を減らしたいというニーズが増加。核家族化や少子高齢化、またコロナ禍の影響もあり、葬儀の小規模化・簡素化が加速。葬儀の準備から実行までを、遺族や近しい人々が中心となり、葬儀社の介入を最小限に抑える、または必要な部分のみをアウトソーシングする新しい葬儀の形が広がりつつある』こと。
さらに『費用を抑える工夫として葬儀社への一括委託を避け、必要なサービス(火葬場の手配、遺体の搬送・安置など)のみを個別業者に依頼し総費用を大幅に削減。通夜、葬儀という二日にわたる葬儀式を「一日葬」として行う。祭壇などの装飾を省き、通夜や葬儀を行わずそのまま「直葬」として火葬するケース。従来の慣習にとらわれず、故人の意向や遺族の想いを反映した、手作り感のあるお別れ会として企画・実行』との報道も紹介しました。しかし、このような葬儀社に頼らない葬送のためには、火葬のルール、手続き、必要な公的書類など、葬儀に関する知識を事前に習得することが必要です。
●最後に大磯町東光院の葬儀活動を紹介。
神奈川県大磯町の東光院は、葬儀社を介さない独自の葬儀サービスを展開。NHKの報道(2025年9月27日放送「NHKニュース おはよう 日本」の「葬儀会社に頼らない弔い」など)で注目。
★東光院の葬儀活動の概要
『東光院の住職は「檀家の方と葬儀社との打合せに同席して、こんなにビジネスライクで良いのか?」との疑問から、「なるべくご家族には亡くなった方と向き合う時間を大切に持っていただきたい」という考えから、約5年前から葬儀社が関わらない葬儀を行っている』と紹介。
★活動の特徴とポイント
①葬儀社を介さない一貫したサービス。
僧侶による一貫対応。専門技術の活用。搬送費用を別途徴収しない。
②費用の大幅な軽減と明朗会計
実費と御布施のみ。(通夜30人、葬儀20人とした場合の総費用は約30万円。)
③寺院を活用した葬儀と寺院の本質的な役割を重視。
東光院が昨年1年間で行った葬儀は55件、檀家数も増加中。「葬儀社に頼らないお寺葬」という独自の取り組みが、地域住民の支持を得て、寺院への関心や帰属意識を高める結果につながっている。葬儀を入り口に檀信徒になる人が少なくないと指摘。
以上、NHKの報道を紹介して10月度の日曜法話会は終了。
※詳細は相武山だよりのウエブ動画をご参照ください。
相武山 山主
2025年10月27日