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相武山 妙法寺 ブログ

思うにならぬを愉しむ

日本の春はやはりサクラでしょうか。全国のいたるところに名所と呼ばれる場所があり、身近な川辺や里山、寺社や住宅にまでサクラが花開き、それぞれ春を愛でる人々が集い、早朝に照り輝く頃から陽の落ちた夜ザクラまでその風情を楽しんでいます。

今春のサクラ(ソメイヨシノ)の開花はかなり早く、温暖化への懸念を抱かせますが、里山のような環境にいるとサクラばかりでなく植物全体の開花が年々早まっている気がします。地球温暖化の警鐘が鳴らされて久しく、自然科学者など有識者ばかりでなく、各国、各地域で現状と未来に対しての思索と検討がなされています。最終的にはこの地球に生命を頂戴した一人ひとりの認識と対応が問われていることになると思いますが、事態を憂うる人は、自分にできるささやかなところから行動を起こしているようです。

私たちの日本仏教では「恩を知り、恩に報いる」ことが説かれています。私たちは多くの人々から有形無形の支えや助力を受けている存在であり、また、天地自然の霊妙な運行の恵みを享受して人生を歩んでいます。当然、温暖化にも注意を配りその改善に努める役割があるのです。より多くの方がサクラを愛でると倶にその開花の早さから温暖化への想いを深めてほしいと願う春です。

妙法院と市民の森のサクラはお彼岸の前半までは順調に開花して行きました。しかし、彼岸の後半から数日は雨天に寒さが加わり、すっきりとした青空の花見とはならず、今一気分が乗りません。やはり天気の影響は大きいなと改めて感じた次第。その反面、4月に入るまで長く風情を楽しむことができたことと、自分の勝手な気分ばかりが先行してものを見ていることにふと気がついて、雨にうたれるサクラをじっとみていると、そこには氷雨とサクラというアンバランスに捉えられがちな光景にも意味があるように思えて、曰く言いがたい感慨を覚えました。

さて、何ごとにもいえることですが、ものごとはすべて表と裏、陰と陽、正と負、得と失、利と害、勝と負、遅と早、喜と怒、苦と楽、若と老、健と病、成功と失敗、など、およそ相反する二つの表現によって一つのすがた(相)が示されます。一つの相には二つの相反するものが内在しているのですが、私たちは単純に一つの相しか認識しないことが多いので本当の相を見失いがちです。

内在しているものの存在に気がつけば、相反するように見えるものは実は一つの存在の両面であることがわかります。そしてそれらは固定されたものではなく、限定された時空における一側面であることを知るのです。

前述の今春のサクラのように、雨天や冷気によって思うような花見ができなければ花を長く愉しむことができますが、春陽が続いて花見を満喫すれば花が舞うのは早いものです。どちらが正解とか好みの問題というのではなく、所詮、天気は思うにまかせぬのですから、自然の摂理のあるがままを愉しむことがおもしろいのではないかと思うのです。

誰もが思うようにならなければ、おもしろくなく不愉快にもなって、落胆したり希望を失ったりするものですが、相反するものが一つの相を示しているだけであり、それも限定された時空によるものと知れば、それほど失意に陥ることはありません。失敗をしてこそ成功の喜びがあり、苦労を味わってこそまことの悦びを得ることができるのです。病に冒されてこそ健康に感謝することができ、死をみつめることによって人生の貴重さがわかります。人生では失ってこそ得るものがあると思うのです。
氷雨に濡れるサクラを見ながら「思うにならぬを愉しむ」ような心のゆとりは、人生の妙味ではないかと思った次第です。

相武山 山主

2023年04月01日