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相武山 妙法寺 ブログ

察知する力を涵養

秋はつるべ落とし冬至まではどんどん夕暮れが早くなります。昼間の時間が短くなり愛犬の散歩もせかされるような気がします。
気候の温暖化に警鐘が鳴らされて久しく、心ある多くの人々が世界中でその遅延と制止に努めています。人類にとっては気候変動に大きな不安がありますが、自然の営みは人心にお構いなくゆっくりと確かなサイクルではたらいているようです。ついこの間まで緑の葉が生い茂っていたのに、初秋を迎えてその色を変えはじめ、四季の移ろいのおもしろさを伝える紅葉は寒さと倶に山から里に降りてきました。

各地から紅葉のたよりが届き秋も深まる中、10月29日の夜、お隣韓国から悲惨な事故の報道がありました。韓国ソウルの梨泰院(イテウォン)という繁華街で、日本人2人を含む156人が圧死するという大きな事故です。ハロウィンを楽しむ人々が梨泰院に繰り出し、あまりの群衆に身動きができなくなり、群衆雪崩が起きて多数の圧死者が出たというものです。
私はすぐに20年ほど前の兵庫県明石市の事故を思い出しました。花火大会の見物者が歩道橋で大混雑となり、群衆雪崩が起きて11名の方が亡くなった大事故です。とても信じられない事故で、当時『こんなことが起きるのか』と驚いたことを記憶しています。

今回はその規模がちがいます。まさに驚愕するばかり。事故の原因は究明中ですが、街の作りや建物・道路の配置、警備状況や群衆の集中など、さまざまに事故が発生する要素が重なったということでしょう。これから真相は究明されるでしょうし、同類の事故に対する対応もとられるようになるでしょうが、犠牲となられた多くの人々が蘇生することはありません。私たちは犠牲者の冥福を心から祈り、この事故を教訓としてゆかねばならないと思います。

今回の悲報にふれて「危険を察知する力」を多くの方に涵養して頂きたいと思いました。
人生では天災や人災がいつ起きても不思議ではないからです。したがって危険を察知することは身を守り、人生を安全安心に歩む基本ともいえるでしょう。楽天的な性格も大切ですがバランスをとって「用心に怪我なし」も銘記すべきだと思うのです。
古来、危険(あぶない)がわかるのは大人、危険(あぶない)がわからないのは幼子といわれてきました。人生の経験を積み重ねるにしたがって、自ずから「危険な事物・事象・人間・世界」が理解できるようになることの謂です。

中国前漢の書『戦国策』には「愚者は正事に闇く、智者は未萌に見る。』とあります。その意味は『愚者はすでに結果が現れていてもそのことがわからないし、智者は兆しがまだ現れていないうちにそのことが見える』ということです。
私たちは智者ではないかもしれませんが、悔いのない人生を歩むためには、せめて危険を察知する力を日頃から涵養することが大切です。

何が起きても不思議ではないという考えは、仏教思想の基本ともいうべき諸行無常に由来します。「あらゆる事物事象は縁起によって成り立っている」ということであり、言葉を換えれば「あらゆる事物事象はさまざまな条件が複雑に連関して存在しているのであり、その条件が一つでも失われたり変化すればその存在は変化する」ということです。
大乗仏教では現実世界の問題を疎かにすることはありません。人生の幸不幸、遇不遇のすべてを学びの対象とし、仏法を燈明として誠実に一日一日の人生を歩むことを仏道の目的とするのです。
日蓮大聖人は兄弟抄に「前車のくつがえすは後車の誡めぞかし」とご教示です。法華の信仰者は察知する力を涵養してより良い人生を歩んでまいりましょう。

相武山 山主

2022年11月01日