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相武山 妙法寺 ブログ

秋季法門研修会(下)

《釈尊とその教団》
秋季研修会の後半は大乗仏教と法華経の概要解説。
はじめに「インド仏教史における大乗仏教概観」。仏教は紀元前5~6世紀、釈尊(ゴータマ・ブッダ)によって創始された宗教。釈尊は普遍の真理を探求し解脱して覚者となりました。その説かれた法理は仏陀の教説として広く流布し人々の心のともしびとなったのです。釈尊は帰依すべきものとして「三宝(仏、法、僧)」を説き、自らの仏教を護り伝える組織として仏教教団(僧団)を構成しました。僧団は出家した僧侶と尼僧によって構成され、釈尊の教えを伝承する基礎となりました。

釈尊の教えはその入滅後、摩訶迦葉を中心にまとめられ(結集)「経」として伝承されました。また、出家教団の規則として「律」が成立することになります。その後、経や律の解釈として「論」が展開さることになります。
教団は釈尊滅後100年~200年に根本分裂を起こします。保守的な教団とされる上座部と進歩的な教団とされる大衆部に分裂したのです。この分裂以前を原始仏教の時代と呼び、その後を部派仏教の時代とよぶことが現代(今のところ)では通説となっています。
根本分裂後紀元前1世紀頃までに20ほどの部派に分裂したといわれています。

《大乗仏教の誕生》
釈尊滅後、北部インドからインド全域、さらに周辺の国々に仏教は広く流布して行きます。マウリア朝のアショーカ王による仏教信仰が有名ですが、広範な伝播と倶に出家僧団による仏教研究も深く精緻なものになって行きます。
大乗仏教誕生のいわれについては、部派仏教(大衆部系)からの誕生、仏塔信仰の在家集団らの誕生など諸説有りますが、紀元前1世紀頃から大乗仏教運動が興ったといわれています。
その担い手は部派仏教の一部を小乗として批判、自らを大乗と称しました。その批判は僧団が「学問仏教、出家僧院仏教、権威主義・・・」に陥っているというもので、「あらゆる人々の救済を願う釈尊の教えから乖離しているのではないか」というものです。彼らは部派仏教とも共存しつつ、伝統的保守的な仏教を批判し、やがて大乗仏教運動を展開して行きます。

《大乗仏教の展開》
大乗仏教の担い手は膨大な大乗経典を創出し、多数の仏、多数の菩薩、他方の仏土を創出しました。大乗経典は約9世紀わたって創作され、初期大乗経典(紀元前1世紀~紀元後3世紀頃)としては「般若経」「法華経」「維摩経」「無量寿経」「阿弥陀経」「華厳経」等々。中期大乗経典(紀元後4世紀頃~)としては「解深密経」など唯識系経典、「勝鬘経」、「大乗涅槃経」などの如来蔵系経典があり、後期大乗経典(紀元後7世紀頃~)としては「大日経」「金剛頂経」などの密教系経典があります。

少し整理するとインド仏教は「原始仏教・部派仏教・大乗仏教」に分類することが可能。原始仏教と部派仏教を厳密に区別することは難しく、部派仏教と大乗仏教が併存していたことも事実。原始経典は釈尊の教えを部派が伝持。また、大乗経典は仏教運動の中から創作された経典ですから、「大乗非仏説」として批判されてもいます。しかし、大乗経典の素材は釈尊の生涯とその思想であり、原始経典に提示されながら軽視された釈尊の思想を再興したと評価されてもいます。

歴史を重視しないインドの特徴もあり、インド仏教の歴史は直線的な思考では捉えられません。インド仏教の研究は大学などを中心に現在も研究中。インド仏教における大乗仏教は原典の発掘などからも注目されていることをお伝えしました。

《大乗仏教の精華「法華経」》
法華経の成立は紀元前1世紀~紀元後1世紀といわれています。法華経の梵名は「サッダルマプンダリーカ・スートラ」。サンスクリット原典は「ネパール本、ギルギット(カシミール)本、中央アジア(西域)本」三種の系統があります。法華経の翻訳は「漢訳、チベット語訳、西夏語訳、古代トルコ語、満州語、安南語、蒙古語、英語訳、フランス語訳、日本語訳・・・」など。
法華経の経題については、サンスクリット原典から「白蓮華のように最も勝れた正しい教え」とすることが「仏の智慧の開顕と仏の存在とその出現」という意味において佳いのではないかとの所見を述べました。

法華経の漢訳には三種が伝わっています。西晋の竺法護(230年代)「正法華経十巻」。 姚秦の鳩摩羅什(344~413、350~409)「妙法蓮華経七巻」。隋の闍那崛多(523~605)・達摩笈多(?~619)共訳「添品妙法蓮華経七巻」です。最も有名で現代でも多くの信仰者や研究者に指示されているは鳩摩羅什訳の妙法蓮華経です。私たち法華信仰の根本に関わるところから鳩摩羅什について概略を解説(スペースの都合上ここでは割愛)。

次に梵本漢訳に異同があることもお伝えしました。提婆達多品は「正法華経、添品妙法蓮華経」では見宝塔品に包摂(27品)。「妙法蓮華経」でも当初欠、(27品)後に加増。薬草喩品の後半部分が妙法蓮華経にだけ欠如。嘱累品が「妙法蓮華経」では第22に在るが、「正法華経、添品妙法蓮華経」では経末に在る等々。経典は時の経過と各地に流伝する中で改変増広されて行くことがあることを説明。

《法華経の特色と思想》
法華経の普遍性と永遠性。
「すべての仏の根源に法華経が存在している。日月燈明仏(序品)、大通智勝仏(化城喩品)、威音王仏(常不軽菩薩品)が法華経を説く」などから。
一乗思想と絶対の平等
「方便品では一仏乗を説いて二乗の成仏を認める。すべての衆生が差別なく平等に成仏できることを提示。法華経が絶対平等の思想であることを示す。常不軽菩薩品では『われは深く汝等を敬う。敢えて軽慢せず。所以はいかん。汝等は皆、菩薩の道を行じて、まさに作仏することを得べし』と。すべての人々を未来の仏として尊敬するという菩薩道の実践」これらのことから「一乗思想は教えの統一をはかったもの」との指摘があることを紹介。
ニヒリズムの超克
「二乗に成仏の記別を与え菩薩道を歩むよう教示したことは、ニヒリズムを超越したものであり、バラモン教、ヒンドゥー教などの輪廻思想からの脱却を意味する。現世を嫌わず菩薩道実践の世界と考え、現実世界での活動に大きな意味があることを教えている」。
仏の永遠性
如来寿量品では「他の大乗仏典と異なり、歴史上の釈尊を中心にすえ、仏の寿命が永遠であることを説く。釈尊は霊鷲山で常に説法教化、信仰者の前に釈尊は現前する。十方分身仏の参集(見宝塔品)に諸仏の統一を観る」。
以上、法華経の特色と思想を概観して秋季法門研修会は終了。(おわり)

相武山 山主

2021年11月29日