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相武山 妙法寺 ブログ

秋天の起工式(地鎮祭)

11月14日(土)、澄みわたる秋晴れのなか久しぶりの起工式(地鎮祭)を執り行いました。当山のご信徒ではなく、札幌市清涼院信徒の鍋山さんからの依頼です。9月の中頃、「孫娘夫婦が大和市に新居を建築するので起工式を執り行ってほしい」と電話がありました。家族みんなで日蓮大聖人の信仰をしているので、是非、法華経で起工式(地鎮祭)をというご希望です。
孫娘のありささんは英国人のご主人の理解を得て、幼い頃から大切にしてきた信仰で起工式(地鎮祭)をすることにしたようです。事前に準備の要項と式のながれを書面にてお伝えし当日を迎えました。

朝からすばらしい秋天に恵まれ起工式びよりでした。建築の場所がわかりにくいために、ありささんと小田急線高座渋谷の駅で合流。はじめてお会いしたのですが間もなくお母さまになられるご様子でした。ありささんの道案内で新しい造成地に到着すると、すでに建設会社の方が3名待っておられました。時をおかずにご主人とありささんのお母さまも到着。
祭壇とお供物の準備をしてご本尊様をご奉掲。法華経要品を読誦するうちに参詣者一同のお焼香。南無妙法蓮華経のお題目を唱えて懇ろに工事の無事と所願成就を御祈念申しあげました。鍬入れは都合でできませんでしたが、私からの祝辞の後、ご主人と建設会社の方が建設地の四隅にお供えの御造酒をそそぎお清め。

その後の歓談でありささんが出産間近で札幌からお母さまがお出でになっていることをうかがいました。建設業者の方に「仏式の起工式・地鎮祭は珍しいのではないですか?」と声をかけると、年配者の方からは「私は以前経験したことがあります」とのご返事。若い方お二人は「初めてです」ということでした。

自らの信仰を自覚している方は、当然のことその信じる法式にしたがって儀式や作法を執り行います。世界を見渡せばキリスト教の世界、イスラム教の世界、ヒンドゥー教の世界、そして仏教の世界と、皆それぞれの教えに基づいた作法で儀式が執り行われています。

しかし、信仰や宗教への認識が薄く関心もあまり強くない我が国では、日常の生活に宗教や信仰を大切にしている方は少数派といえるでしょう。宗教の教育やその説明を丁寧に受けた機会も少ないこともあって、表面的にはともかく、宗教や信仰について不信や疑問、さらにはいかがわしささえ感じる方も少なくないようです。そこには旧仏教教団による檀家制度意識の悪弊や新興宗教による常識外れの諸活動への不信があるのかもしれません。そのようなことから「宗教や信仰には当たらず障らず、時宜に合わせて利用すれば良い」という方が多いようです。

そのため現代の日本では「子どもが生まれたら神社へ初参り、結婚式はキリスト教式で。家族が亡くなると僧侶を招いて仏式で」というすがたを多く見受けます。そこには「みんながやっているから・・・」とか「みんなと同じようにしていればそれで良い」という思いがあるばかりで、それぞれの宗教や信仰に対する敬虔さをうかがうことはできません。日本人が古来、多神教的宗教観を有していることもありますが、各自の思いや考えにさまざまな宗教や信仰を利用しているように見えることは残念です。

個人の思想や信条、信教の自由などは基本的人権にかかわることですから、そのような信仰観や行儀作法も認めるべきなのでしょうが、自らの信仰を自覚し認識している方にとっては、やはり信じるかたちで大切な儀式・行事を執り行うのが自然なことです。そのためキリスト教徒やイスラム教徒、ヒンドゥー教徒や東南アジアの仏教徒など世界の多くの信仰者に、現代日本の一般的信仰観を理解してもらうのは難しいかもしれません。我が国のありようを宗教に寛容だと見ているのか、不見識と見ているのかはわかりませんが、不思議だと思っているのは事実ではないでしょうか。

仏教徒との自覚があれば起工式(地鎮祭)を仏式で行うのは当たり前のことといえるでしょう。当山では今までも法華宗日興門流の法式に則って、しばしば工事の無事と所願成就を祈念してきましたが、久かたの起工式に臨んで再び信仰の純粋性を考えるひとときとなりました。来春には無事に竣工することを願い、施主ご夫妻のご健勝を祈り新しい生命の誕生を祝福いたしました。

相武山 山主

2020年12月22日