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相武山 妙法寺 ブログ

コロナ禍に法事雑感

日本では仏教伝来のいにしえから故人や先祖のために追善供養として法事が営まれてきました。しかし、釈尊が仏教を創始されたインドでは先祖崇拝や故人への追善供養という意識はみられません。釈尊の入滅後仏教が北方インドからアジア全域に伝播し、やがてシルクロードを経て中国にも受容されましたが、中国では在来の道教や儒教の影響をうけた格義仏教となりました。その中国仏教は韓国経由で我が国に伝えられ、日本では土着の祖先崇拝が仏教と融合し、伝来当初より故人や祖先のための追善法要が営まれるようになったのです。

【檀家制度・・・】
飛鳥の昔から徳川の時代まで仏教は国の権力者から地方の有力者まで篤い帰依を受け、彼らの精神的支柱でもありました。したがって冠婚葬祭などの儀式も仏教の教えや作法の影響を強く受けたといっても過言ではありません。今では想像もつかないでしょうが天皇家の葬儀も明治以前までは長く仏教式で執り行われていたのです。
さらに徳川幕藩体制のもとキリシタン禁教令がしかれ、檀家制度によって庶民もすべて仏教徒であることを強制されました。檀家制度は徳川幕府の後ろ盾によって仏教教団や寺院に権威や権力をもたらしましたが、仏教本来の自由闊達であった教学や布教に大きな制約をもたらし、今日にいたるまでその弊害がみられるのは残念です。
また、檀家制度は家父長制にも通じるシステム。戦後、基本的人権や民主主義を尊重する我が国では、夫婦や親子、家族や親族の在りようなども歴史的変化を遂げつつあります。各自の思想や信条、信教の自由も憲法で保障されていますから、曖昧模糊とした檀家制度への認識も見直しが迫られているように思えます。

私の口癖ですが『何事にもプラスとマイナスがあります』。檀家制度にもさまざまな負の問題はありますが、仏教の教えや儀礼を護り伝えて人心を涵養し、人徳を増すよう導いてきたというプラス面もありました。また、地域に根ざしたまじめな寺院の多くは迷い悩む人々の心のよりどころともなってきたのです。さらに檀家さんが菩提寺を精神的にも経済的にも支えることによって仏教を護り、日本の伝統や文化を伝えてきたことも事実です。
さて、檀家制度によってすべての国民が仏教寺院に所属することになりましたから、人々の生活全般に仏教の教えや儀礼が影響を及ぼし、やがて文化・伝統、習俗・風習となって今日まで伝えられているものも少なくありません。先祖や故精霊への追善供養を営む法事もその一つです。
前のブログでもふれましたが多くの人にとって人生は艱難辛苦に満ちたもの、その人生を全うした故人の尊厳に想いをはせ、縁者として来世の安楽と福徳を祈る厳粛な儀式が葬儀。心の想いはかたちに顕されることによって伝えられるもので、言葉や態度、振る舞いなどが問われるゆえんです。
故人への想いが問われる葬儀も一部では簡便化されたり不要とされる時代となっています。このような世相については仏教者からの説明や案内、さらに適切な対応がなされていないという指摘もあります。私たち仏教寺院は誰もが気軽に相談できるお寺を心がけ、縁者の方々が負担とならない葬儀を執り行えるように努めなければならないと自戒するところです。

【追善の法要】
日本の仏教徒の多くは葬儀の後に追善供養の法事を営みます。追善供養とは故精霊のために仏事を執り行い、仏道修行の功徳善根を故精霊に回向する供養のことです。葬儀直後には七七日忌(四十九日忌)法要。その後、百ケ日忌、一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌、十七回忌、二十三回忌、二十七回忌、三十三回忌、五十回忌と続きます。当山でもお正月にその年度の年回忌表をお渡していますが、法事を営むか否かは縁者と各家庭の想い次第でありそれぞれの都合によりますから、できるときもあればできないときがあるのも自然です。
当山では毎月法事があるわけではありませんが、墓所などの開眼を含めて年間に20件~40件ほどの法事を執り行います。コロナ禍の今年は法事も少し趣を異にしていました。今までも『高齢や体調不良のために参詣できないのでお寺の方で御供養してほしい・・・』という依頼はありましたが、今年は『無理して参詣できないわけではありませんが、コロナ禍のなか家族や親族にも心配をかけたくないのでお寺の方で供養して頂けませんか・・・』というお申し出が数件あったことです。まさにコロナ禍が檀信徒皆さまの法事にも影響しました。
もちろんこのような時局下ですが、今月も感染予防を徹底し参列者を限定した追善法要が営まれました。金子家が第一周忌、小出家が四十九日忌、青野家が二十三回忌と二十七回忌、菊地家が有縁精霊への供養、豊島家が墓所開眼法要などです。法事のあり方も自身の置かれている環境や時局によって変化することはやむを得ないことです。大切なことは縁の深い人への想いであり仏道の功徳を回向しようという志だと思います。


よく日本の仏教は葬式仏教と揶揄されますが、当山では葬儀や法事などの機会を通じて仏教のおしえの一端なりともお伝えしたいと願っています。そのため、追善の法要は故精霊への回向が主眼なのですが、仏教をお伝えする佳い機会と考え拙い話ではありますが、御回向の後、10分前後の法話を必ずさせて頂き仏縁を深めて頂くよう努めています。

相武山 山主

2020年10月27日