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相武山 妙法寺 ブログ

仏教東漸の道を訪ねて(下)

私にとって今回の中国西域シルクロード探訪のポイントは6月27日の炳霊寺石窟と28日の麦積山石窟の見学でしたが、北京からの帰路には1日だけ西安観光も叶いました。わずかな時間でしたが20年ぶり3度目の西安を楽しむことができたことに感謝しています。
かつては長安とよばれていた西安。紀元前11世紀頃より、西周から秦、漢から隋、唐の都城として約二千年にわたって中国王朝の都として栄えた古都です。もちろん現在でも中国有数の大都市で西域への入り口となっています。

長い歴史がある古都らしく近郊をふくめて観光地は無数にあります。最も有名な遺跡は「秦始皇帝陵」と「兵馬俑抗」でしょうか。玄奘三蔵ゆかりの「大慈恩寺 大雁塔」や「明代の城壁や鐘楼」、イスラム教徒の街「回民街」、阿房宮遺跡や大明宮遺跡、新石器時代の半坡遺跡、茂陵・乾陵という漢朝陵墓群や唐朝陵墓群、楊貴妃伝説の華清地、仏教寺院としては法門寺、興教寺、香積寺、青龍寺、大興善寺、大仏寺等、我が国にもゆかりの深い古寺名刹があります。また、博物館も陝西省を中心とした陝西省歴史博物館、石碑・墓碑・金石文・墓誌銘・石彫刻を多数収蔵し、中国最大の石造の書庫といわれる碑林博物館などがあります。中国の歴史や文化に関心のある方にとっては長期滞在してじっくり見学したい魅力的な古都といえましょう。かく語る私もその一人です。

帰国前日となる6月29日、西安市内のホテルから高速道路を1時間ほど走り兵馬俑観光へ。駐車場からはカートで「秦始皇帝兵馬俑博物館」入り口へ。兵馬俑は約2200年前に始皇帝陵を永遠に守る陵墓の副葬品としてつくられ埋葬されたものです。陵墓の周囲を取り囲み、その数8000体を数え、それぞれ異なった風貌で等身大の大きさ。馬や戦車、青銅の兵器もあります。博物館は1号坑、2号抗、3号抗、秦始皇帝銅車馬陳列館に分かれていて、紀元前の秦で作られた姿をそのままの形で見ることができました。

過去2回の見学とは見違えるほど立派な博物館に変わっていて、中国が世界遺産として力を入れているのがわかります。それにしてもものすごい観光客の数、まさに人の波です。中国人が圧倒的多数ですが海外の人たちも少なくありません。ガイドさんによれば1日の最大入場者は17万人だったということです。私たちは範さんやガイドさんにはぐれないよう、細心の注意をはらっての観光となりました。
テレビやビデオ、書籍や画集などでおなじみの兵馬俑を間近に観るのは感動的でしたが、圧倒的な文物の展示を楽しむには人数の制限と時間の余裕がほしいと思いました。人の波に押されながらエリアのレストランでランチを頂き、再び西安市内へ。

玄奘三蔵ゆかりの大慈恩寺を訪ねました。このお寺も以前とはすっかり様変わり。以前は素朴な古寺の雰囲気でしたが、整備がととのい立派な観光大寺院になっていました。観光客もごった返すほどです。ここで私たちは大雁塔に上ぼるグループと周囲を観光するグループに分かれました。私は以前に上ぼったことがあるので寺内の散策を楽しみました。大慈恩寺からは旧市街明代の城壁へ。城壁に上りシルクロードの出発点とされる西門などを観光して往時を偲びました。

中国での最後の夕食は陝西歌舞大別院。食事をいただきながら唐代の歌舞芸術を楽しむ趣向です。はじめはそれほど期待していなかったのですが、出演者は唐代の歌舞芸術を専らとする俳優の方々で、真剣ですばらしい演技にいつの間にか引き込まれて、あっという間の70分のショータイムでした。佳い芸術を鑑賞させていただきました。

30日は9時過ぎにホテルを出発、北京に向かうため西安咸陽国際空港へ。インフラの充実と発展が著しい中国。この空港も前回来たときとは比較にならないほど立派になっていました。帰路はまことに順調で西安から北京国際空港をへて羽田空港には予定よりも早く到着。今回の「仏教東漸の道を訪ねて」でお世話になった範さんにお礼を申し上げ、参加された法友の皆さんと挨拶を交わし意義深く愉しい旅も散会しました。

今回の旅で印象的だったのは中国での積極的なAIの活用と監視カメラ、そして徹底したキャッシュレス決済でした。中国の監視カメラはあちらこちらに張り巡らされています。その数1億7000万台といわれ、さらに増設されるそうです。何時どこで誰に監視されているかわからないというのは気持ちの良いものではありませんが、犯罪の抑止と犯罪検挙に効果があるのは容易に理解できます。それを理由に監視社会が構築されているようです。
驚いたのは顔認証の活用です。西安空港で範さんが『大山先生、そのモニターに顔を近づけてみてください』というので、空港内のモニターに顔を近づけると、私の顔が映り「私の名前、搭乗する便名、搭乗ゲート」が案内されました。私の行動はすっかり把握されていてもうびっくりです。丁寧だなと思う反面、そこまでしてくれなくても・・・、と複雑な気持ちになりました。

次に中国のキャッシュレス決済はかなり進んでいます。都市と地方との格差はあるのかもしれませんが、今回の旅で都市ではほとんどがキャッシュレス決済のように見えました。空港でも現金で支払うと面倒くさがられることがあります。元々、偽札問題などもあった中国ですからITを活用しながらその対策にあて、さらに一党独裁の社会体制なので個人データをデジタル管理することも可能です。いずれにせよ、中国でのキャッシュレス決済の普及は我が国の比ではありません。
日本でも10月からの消費増税に併せてキャッシュレス決済還元が行われ、キャッシュレス決済の推進がさけばれていますが、以外に保守的な国民性ですから遅々とした歩みなのでしょう。それでも時の流れには抗しきれないものもあり、遠からずキャッシュレス決済の時代になるのではないかと思います。

上述のような中国の膨大な監視カメラとキャッシュレス決済の徹底をみて、時代のながれを考えると共に、その背景には共産党一党独裁という中国の独特な社会システムがあるのではと思いました。中国でも基本的人権、民主主義、自由と平等がうたわれていますが、言葉は同じようでも我が国や欧米とはその内実が異なるのかもしれないと感じた次第です。
今回の「仏教東漸の道を訪ねて」の旅は、仏教伝来の歴史と仏道を求める先師先達の志にふれたいとの思いからでしたが、それだけにとどまらず現代中国の世相からも多くの学びを得ることができました。
結びに仏天のご加護に深く感謝を申し上げます。(おわり)

相武山 山主

2019年11月27日